タイム

タイムはシソ科の多年草で、原産地は地中海沿岸。主な産地はフランス、スペイン、ポルトガル、ギリシアなど、亜熱帯から温帯にかけて生育しています。

かすかな苦味と清々しい香りのする、心地よさの感じられるハーブです。
ヨーロッパでは昔から「タイムの香りがする」といわれることは最高の褒めことばだったそう。それはタイムが小さくても気品のある香りを漂わせていることから、勇気の象徴、気品や優雅さを表すハーブとして人々に信じられていたからです。そのため当時は戦争に行く兵士がタイムの小枝を身につけたり、女性がタイムの柄の刺繍をほどこしたものを兵士にプレゼントしていたといわれています。

ひとくちにタイムといっても、その品種は多種多様、用途も料理から観賞用まで様々です。
料理に使用されるものでポピュラーなのは、さわやかな芳香が強く、フランスやイギリスで有名なガーデンタイム、また主にスパイスとして使用されるものには、すがすがしい中にほろ苦さと甘味が感じられるコモンタイムなどが挙げられます。
他にもレモンタイム、コンチネンタルワイルドタイム、クリーピングタイムなど、約30種にものぼる種類のタイムがあります。

タイムにはフェノールやチモールといった殺菌・防腐作用のある成分が含まれており、ソーセージやハムなどの加工に適しています。また肉や魚と相性がよく、肉料理や魚料理の他、ホイルの包み焼きやシチュー、トマト煮やマリネなどにもピッタリ。
長時間煮込んでも香りが残るため、だしをとる時に使うブーケガルニやブイヨンの材料には欠かせません。また食用はもちろん、入浴剤やポプリなど香料や観賞用としても人気があり、幅広く愛されているスパイスなのです。

パセリ

パセリはセリ科の二年草で、別名をオランダゼリといい、あざやかな緑色とさわやかな苦みのある香りが特徴のハーブです。原産地は地中海沿岸ですが、環境に適応しやすい性質であるため今では世界各地で栽培されています。

パセリには大きく分けて4つの種類があります。まず1つ目、葉が縮れた日本でおなじみのパセリがパナマウント種のモスカールドパセリ(カーリーパセリとも呼ばれる)です。葉の部分を料理に添えて、彩りを演出するのによく使われます。2つ目はイタリアンパセリ(フレンチパセリとも呼ばれます)。これは葉がまっすぐで平たく、その分食感もモスカールドパセリと異なります。この他に大きな葉柄の部分を食べるナポリタンパセリ、ニンジンのように根の部分を食べるハンブルグパセリがあります。

パセリは栄養価が高く、ビタミン、ミネラルや鉄分が豊富に含まれます。特にビタミンAはにんじんと同等の量で、ビタミンCはレモンの2倍!またパセリ特有の苦味成分であるアピオールには臭みを消す効果があるので、肉や魚の臭み消しや口臭予防にも利用されます。

料理に使われる場合は、やはりキレイな緑色を活かしてサラダやパスタ、ソテーなど様々な料理の飾りに使うことが多いでしょう。もちろん見た目を彩るだけでなく、塩と相性がいいため塩味の料理にもよく利用されます。
特にヨーロッパではパセリのみじん切りを塩・こしょうと同じ感覚で日常的に使用しているそうです。また、パセリは味や香りに干渉せず素材や他のスパイスの良さを引き立てる効果があるため、料理の最後にみじん切りにしてふりかけたりしても使われます。

スパイス展示館

東京板橋区にスパイス神社・スパイス展示館というものがあります。
正式名称を鬼神社といい、青森県の弘前市に本祠を置く鬼を祀った神社です。なぜ鬼を祀った神社がスパイス神社と呼ばれるのでしょう?実はそのつながりはにんにくにあるのです。この地域では昔、村人が稲作の用水について悩んでいた時に鬼がやってきて、一晩で灌漑用の水路を作り人々を救ったという伝説が伝えられています。そんな鬼の好物がにんにくだと言われており、スパイス神社と呼ばれる由来となっています。
にんにくはガーリックパウダーとしてカレーのスパイスに使用されています。そこでガーリックパウダーを世間一般に広めたエスビー食品がこの縁を機に神社を分祠したというわけです。

またエスビー食品創業者の山崎峯次郎と社主であった山崎春栄は、カレーとスパイスの普及や研究に尽力し、会社の発展を支えてくれた人々や社会に成果を還元したい、という思いを抱いていました。この遺志を受け継ぎ、スパイスのさらなる普及を目的に、板橋工場ゆかりの地にスパイス展示館が設立されたのです。
さて、気になる展示館の中はどうなっているでしょうか。
1階には青森県から分祠された鬼神社が置かれ、創業者である山崎峯次郎と社主であった山崎春栄の銅像、会社年表や当時のパネル写真など、会社の歴史を振り返る資料が展示されています。そして2階に上ると世界中のスパイスがパネルと一緒に飾られている他、スパイスをパウダー状にするための製粉機やカレー粉の作り方の説明が語られた資料を見ることができ、スパイスとカレーに関する歴史や知識を得られる空間となっています。

神社ではお参りやおみくじも出来るそうですから、カレー好きを極めたい方、もっと美味しいカレーが作れるようになりたいなど、何かカレーにまつわる強い想いを抱いている方は、東京見物がてら足を運んでみてはいかがですか?

ローズマリー

ローズマリーの香りには個性的な清涼感があり、どこか抹茶の香りにもが近い所があります。主にイタリアなどヨーロッパで日常的に広く使われ、殺菌効果や消臭効果があるため肉や魚料理で臭み消しとしてよく利用されます。素材にローズマリーをまぶすと、鮮度が保たれ腐れにくくなるため、老化防止に効く若返りのハーブの名称でも親しまれています。またポリフェノールを多く含み、活性酸素の除去や抗酸化力に優れていることでも有名。様々な効能を持っているのです。

薬理的な使用方法だけでなく、もちろん香り付けとしても優秀です。
特にお勧めなのは鶏肉やラム、子羊のローストやグリル料理です。ラムなどの癖のある肉はいいのですが、鶏肉や魚など淡白な素材は、程よくすっきりとした風味になるよう控えめに使用するといいでしょう。

バジル

トマトと相性がよく、イタリア料理によく使用されることで有名なバジル。みずみずしくさわやかな香りと色鮮やかな緑色が特徴で、ハーブやデコレーションとして様々な料理に利用されます。
原産地は熱帯アジアやインドで、シソ科メボウキ属の一年草です。日本ではバジリコとも呼ばれ、和名ではメボウキという名がつけられています。
どんな環境にも適応できることから、現在はなんと世界中で40種類ものバジルが栽培されているそうです。
火を通さず生の葉をそのまま使用する場合は、指で適度な大きさにちぎって料理にまぶしたり、細かく刻んでマリネやパスタにあえたりします。また、イタリアで有名なジェノヴェーゼ・ソースでも使用されています。
また、火を通す場合はトマトの煮込み料理に加えたり、ペースト状にして下味として牛肉に塗ったりします。こうすると肉からにじみ出す脂肪分とよく溶け合い、旨みがアップするのだといいます。
店先に並ぶ際には、乾燥させた葉やパウダー状にしたものも販売されており、様々な用途で活躍しています。
カレーにさっぱりとした風味を加えたい時には、クローブ・カルダモン・クミンなどのスパイスと組み合わせると相性がよいでしょう。スパイスとしての馴染みはあまりないかもしれませんが、タイのグリーンカレーなどにはよく利用されているようです。