トルコのカレー

トルコ料理はフランス料理(イタリアと合わせて西洋料理)、中華料理に並ぶもうひとつの世界3大料理といわれています。トマト・玉ねぎなどの野菜をふんだんに使うのが特徴で、煮込み料理が多いようです。また、トルコ料理といえばベースにヨーグルトを使用することが有名、どんな家庭料理にも入っているといえるぐらい一般的に使われています。さわやかでさっぱりした酸味がトルコ料理のテイストです。
さて、トルコのカレーですが、やはり野菜とヨーグルトが基本になります。スパイスは控えめにし、食材の旨みやコクを引き出して仕上げるのがポイントです。たまねぎやにんじんはしんなりするまで炒めたり、すりおろしたりして、丁寧に下ごしらえします。野菜以外には、豆やラム肉などがトルコカレーと相性がよく、好んで使われます。
ちなみにカレーと一緒に飲む飲み物として、紅茶や珈琲にミルクを加えた乳飲料がよく出されます。トルコ人は元々紅茶が好きで、カレーのような辛みの強い食べ物を食べる際、辛さをやわらげるための工夫として飲み出したのだといわれています。
トルコ風のカレーをいただくと、なんだか心も体もほっと落ち着きそうですね。

カレーとクラーク博士

「少年よ、大志をいだけ」の名言で有名なクラーク博士ですが、実はライスカレーと関わりの深い人物としても有名です。


クラーク博士は札幌農学校の教師で、生徒に飲酒を禁止させたり毎日賛美歌を歌わせたりと、“道徳教育に熱心なジェントルマン”といった存在でした。
はるばる外国からやってきたクラーク博士は、日本の子供たちが貧相な体つきをしていることが気にかかりました。その原因が日本人は米ばかり食べていることにあると思った博士は、タンパク質のある食事を摂らせようとメニューを洋食にシフトさせることにしたのです。
そこで出されたのが「主食はパンを推奨する、そしてライスカレー以外の米飯は全面禁止する」という規則。


なぜライスカレーはいいの?と疑問に思うのではないでしょうか。カレーならほかの具材からタンパク質を摂取することができますし、日本人が主食として好む米を全く食べられないのもかわいそうだという理由からそうなったといいます。また、当時は米が高価だったため、毎日の食事でご飯を炊くだけの米を買えなかったことも関係しているようです。


クラーク博士とカレーに関する文献には様々なものが残っていますが、古いものでは『恵迪寮史(けいてきりょうし)』が有名です。これには札幌農学校ではパンを推奨し、カレー以外の米飯が禁じられていたという一連の話が記されています。また『新北海道通信使』という文献には、何と一日おきにカレーが出されていたという記録が残っています。現在の私たちより頻繁に食べていたことになるのですから驚きですね。


ちなみにライスカレーと呼ばれるようになったいわれには、「ご飯」よりも「ライス」の方がハイカラな響きだから、という説や、クラーク博士が名づけ親ではないか、とする説があります。しかし、博士が日本に来訪する前に記された公文書には、ライスカレーという意味の「タイスカレイ」という言葉が使われており、真相ははっきりしていません。


何はともあれ、クラーク博士が少年たちをカレーで育てたことは事実です。
少年が大志を抱くには、原動力としてカレーのような栄養のたっぷり入った食事が必要なのかもしれませんね。

カレーとアーユルヴェーダ

最近TVや雑誌で、アーユルヴェーダということばを耳にしませんか?
アーユルヴェーダとは、サンスクリット語で生命・生気という意味のアーユスと、知識という意味のヴェーダを合わせて作ったことば。インドで古くから受け継がれてきた思想で、約五千年もの歴史があります。アーユルヴェーダは人々が健康で賢い生活を送れるよう、医学や生活の知恵、生命科学、哲学の概念を含んだ学問として発展してきたのです。

実はカレーのスパイスにもアーユルヴェーダの概念が含まれています。その概念とは、人間は運動・変化・安定性の3種類の生命エネルギーによってからだの生理的機能が統率されるというもの。この3つのエネルギーのバランスが取れている時こそ健康な状態だというのです。

そしてそのバランスを保つには食生活がとても重要だと考えられています。
スパイスは体を健康にする効き目のあるハーブや薬草をそのまま使ったり、種子を乾燥させて砕いたりしてパウダー状にしたもの。香り付けや色づけといった料理を美味しくする効果だけでなく、消化促進・疲労回復など体の調子を調整する働きもあります。スパイスは体のバランスを整えるという、アーユルヴェーダの食文化の基礎を支える存在だといえるのです。

それにしても、インドでカレーは思想や文化と密接に関わっているのですね。まだまだ探求の余地がありそうで、カレー好きとしてはとても楽しみです。

カレーは日本人の定番食

皆さんおわかりのように、日本人はカレー好きの国民です。
街に出れば、インドや東南アジアなどの本格的なカレーが味わえますし、カレーうどんやカレーパンといった、カレーを利用した食べ物も定番の人気食ですよね。

そこで沸いてくる疑問が、「日本人は一体どのくらいの頻度でカレーを食べているんだろう?」ということです。
農林水産省の純カレー・即席カレーの統計と、日本缶詰協会のレトルトカレー・缶詰カレーのデータを使って調査した結果、日本人は1年に約62回カレーを食べているそうです! 家庭での手作りカレー、外食するカレー、レトルトカレーなどの全てを含んだ数字ですが、ゆうに週に1度はカレーを食べていることになるのだから驚きです。

ある調査によると、家庭でカレーを作って食べる頻度は、月に2.5回程というデータも出ています。カレーは基本の料理方法が簡単ですので、お年寄りや子どもでも気軽に作ることができます。また、反対に味を追求したい人にとってはスパイスの種類や材料、調味料などいくらでも工夫できるため、自分なりのアレンジが楽しめる、魅力的な料理だといえるでしょう。こんなこともカレーを食べる頻度を上げる要因になっているのかもしれませんね。

手で食べるカレー ~国が違えば食べ方も違う~

インドではカレーを手で食べるのが一般的です。
正式なマナーというものは特に存在しませんが、手で食べる時に注意することや、正しいとされる食べ方があるのだそうです。

一番重要なのが、「右手」を使うこと。これは絶対のルールです!
インドでは、「左手」は不浄の手とされています。そのため食事や握手の時は、「右手」を使用することになっているのです。

どのように手を使って食べるのかというと、まずは食事の前は手を洗います。これは日本でも同じですね。日本では石鹸を泡立てて両手を洗いますが、インドでは右手だけ水で洗うのが正式な方法のようです。
そしてスプーンの代わりに手を使ってごはんにカレーをかけ、よく混ぜます。ここから手でカレーとご飯をすくって食べるのですが、方法が2種類あります。
指を使ってご飯を一口大にまとめて口に運ぶ方法と、日本でいうなら寿司を握るように、手のひらでご飯をまるめて口に運ぶ方法です。
どちらが正しいというわけはないので、食べやすい方法でいただきましょう。

ちなみにインドのカレーはサラサラしていますが、日本のカレーはトロッとしています。これは食べ方が異なるからだという説があります。インドはさらっとしたカレーのほうが手でかき混ぜやすいですし、反対に日本はスプーンを使って食べるので、液体よりも多少とろみのついた状態のほうがすくいやすいのでしょう。
文化の違いによる、カレーの違い。カレーっておもしろいですね。

カレーリーフ ~カレーの木?~

「カレーの木がある」。
そう聞いたら皆さんはどんな木を想像するでしょうか?
カレーは料理名であって、野菜や果物ではありませんから、そもそもイメージがわきづらいかと思います。しかし、確かにカレーの名のつく植物が存在するのです。

カレーの木には2種類あります。ひとつはカレーリーフという名前で呼ばれています。
葉っぱからスパイシーな香りがするため、インドやスリランカでは、カレーや魚・ココナッツを使った料理の香辛料として使用されています。西南アジア原産のミカン科に属する植物で、南インドやスリランカ、ヒマラヤ山麓などでは特に珍しくもなく、普通に自生しているそう。家庭で栽培することも多いといいます。

もうひとつはカレープラントと呼ばれる木で、南インドを中心に観賞用やハーブとして使われています。夏が終わると、カレー粉のような鮮やかな黄色の花をつける、キク科の多年生植物です。
主にハーブとして葉の部分が使われますが、香り立ちがいいので料理に用いる場合はごく少量でOK。また花は乾燥させてスープやピクルスの香り付けに使います。
色が奇麗に残るため、ドライフラワーやポプリの材料にも使われるそうです。

カレー好きの知り合いにプレゼントすると、意外性もあって喜んでもらえるかもしれませんね!

カレーとチャイ

チャイはカレーによく合う飲み物としてよく一緒に食卓に出されます。ヒンディー語やロシア語、トルコ語で茶という意味を持ち、インドでは煮出して作ったミルクティーを指します。元々中国で誕生したチャ(茶)が訛り、チベットからインドへ伝わった時にチャイという名前になったと言われています。


では家庭でできる基本的の作り方をご紹介しましょう。
(1) まず鍋ややかんで水を火にかけ、紅茶の葉を入れて煮出します。
(2) 沸騰したらスパイスと牛乳、砂糖を加え、再沸騰したら火を止めて1分程蒸らします。

スパイスにはカルダモンやマサラをよく使います。砂糖は好みの量で結構ですが、インドではチャイをお菓子のような感覚で飲むため、何杯も砂糖を入れかなり甘くして作るそうです。

日本やヨーロッパでいうお茶は手軽なものというイメージが強いですが、チベット地方やシルクロードの遊牧民にとっては、チャイは日々の栄養補給源としてとても大切な飲み物だったそうです。体を温め、生き延びていく栄養を確保するために、スパイスやハーブ、酒など様々なものを混ぜ込んで独自の味が生み出されてきたのですね。

カレーとナン

日本ではカレーライスという言葉が浸透しているくらいですから、カレーといえばライスにかけて食べるのが主流です。しかしカレーと一緒に食べる炭水化物系の主食はライスだけではありません。インドのナンはカレーとセットでイメージが沸くような、ポピュラーな主食です。炊きたてのご飯にカレーをかけて食べる美味しさに多少飽きてしまったら、他の組み合わせに変えてみてはいかがでしょうか。

ナンはインドをはじめ、中央アジア・中近東で食べられているパンです。
最近はカレー専門店やパン屋でもよくみかけるようになりました。学校の給食や冷凍食品でも出回るようになり、日本人の生活にもだいぶ溶け込んできているようです。
また自宅で気軽に作れるよう、カレーの料理本やナンもレシピが載っているのをよく見ます。

ナンは人の顔程ある大きさの楕円形で平べったく、もちもちした食感が特徴です。生地は精製した小麦粉を使用。
作り方は、まず小麦などに含まれる野生酵母菌を自然発酵させた自然種で生地を発酵させます。そして生地を平らにのばし、毎日ナンを食べるような国やカレーの専門店ではタンドゥールと呼ばれる土釜の内壁に貼り付けて焼き上げます。
家庭で作る場合はフライパンで焼きます。多少焦げてしまったような焼き色がまた手作りの良さを感じさせてくれます。

カレーと食べるときは、ナンとカレーを別々に食べてもよし、ナンにカレーをつけて食べるのもよし、自分が一番美味しいと思う食べ方を研究してみるのもいいですね。

日本一カレーが好きな都道府県

日本で最もカレー好きな都道府県はどこでしょう?そんなことも分かってしまうのです。世の中には様々な調査があるもので、なんとカレールウの消費量を都道府県別に調査したものを見てしまいました。

平成16年度の総務省家計調査の都道府県県庁所在地の家計調査によると、カレールウの消費量、購入金額ともが1位だったのが鳥取市でした。さらに調べてみると、同市のカレールー消費量は03~05年の3年間の平均値では1位、04~06年の平均消費量でも1位と、平均して高い消費量を誇っているのです。

意外でしたか?理由は分かりませんが、どうやら鳥取県の方たちは他の都道府県の方よりもカレーがお好きなようです。

もちろん、あくまでも県庁所在地のみに限定した調査ですから参考程度にしかなりません。ただし、このような結果を受けて、鳥取ではカレー好きな県として観光アピールをしているそうです。
仙台市も負けてはいられません!皆様に美味しいカレーを食べていただく為に、我々も一層やる気が出てきました!

カレーの器

カレーの専門店やレストランのカレーは、取手がついたランプの形のようなポットに入って出てくることがあります。そして、これだけでカレーがぐっと高級に見えたり本格的に見えたりするから不思議です。
この器はカレーポット、グレービーポット、ソースポットなどの名称で呼ばれています。
グレービーとはローストビーフやミートローフに良く使われるソースのことです。
日本ではカレー用のポットというイメージが定着しているようですが、元々はイギリスで誕生し、グレービーソースをはじめ、その他様々なソースを入れるためのものとして使用されていました。

またソースをすくってかける、アクを取るような場合に使用するのがソースレードルです。
一般的なのは耐久性に優れたステンレス製ですが、軽くて持ちやすいアルミ製、木製のものもあります。木製のソースレードルはブナやオリーブの木などが材料に使われています。カレーを盛る時に木の香りがするなんて素敵ですよね。
形もおたま状のもの、鳥のクチバシのような形をしたものなど様々で、用途によって使い分けることが出来ます。

カレーをもう少し本格的に味わいたい気分になったら、こんな風に食器にこだわってみてはいかがでしょう。家庭で作ったいつものカレーも、家族や友達に「今日はなんだかおいしいね」と言ってもらえるかもしれません!

空の上でカレー

日本からインドへの航空路線は、いずれもエア・インディアの運行になります。そしてこの飛行機の機内食としてカレーがメニューに加えられているのです。
チキン、シュリンプ、マトンのほかベジタリアン用のカレーも用意され、このカレーをライスやチャパティなどで味わいます。いずれも本格派の味で評判は上々。作っているのは日本のコックなのですが、レシピはボンベイの本社にて作られています。詳細にスパイスの調合などが指示され、3ヶ月ごとに見直されるというこだわりが味にも反映された逸品です。
他にはタイ国際航空やビーマン・バングラデシュ航空などでカレーがメニューとして出されているようです。タイ国際航空も本格派の味を追求しているようで、機内で十分にタイ料理を満喫した気分になるとか。

対して、日本ではどうでしょうか。日本航空では機内食としてカレーをメニューに加えています。これはカレーが大好きな日本人へのはからいで、これもなかなか好評なよう。海外便ではニューヨーク線、パリ線、フランクフルト線などでカレーが選択できますがエコノミークラスではカレーライスは食べられません。
空の上で食べるカレーは、地上で食べるカレーと違ってそれだけで特別に思えますね。

カレー粉偽造事件

昭和6年、C&Bのカレー粉が偽造されるという事件が起こりました。C&Bのカレー粉をベースにしてそれに唐辛子や陳皮を混ぜてコストの安いカレー粉を製造、それを更にC&Bの空き缶に詰めて売り出したのです。当時は使用されていたカレー粉はほとんどが輸入品、しかも一流店であれば必ずC&Bと相場が決まっていました。この偽造犯らはそこに目をつけ、本家C&Bの半値近くの安い値段をつけて売りさばいたのです。
そんな事がいつまでも続くわけがなく、イギリス大使館から抗議が起こり刑事事件となってしまいました。60名近くのものが新聞紙上に掲載されトップニュース扱いで大々的に報じられたのです。更に、事件の余波で全国の問屋や小売店に在庫していたC&Bカレー粉が真偽の調査のために出荷ストップする事態へと発展してしまったのです。
これだけの大事件となってしまったカレー粉偽造事件。しかし、国産のカレー粉がこの事件をきっかけにして注目されるようになりました。日本でつくるカレー粉も味の面でひけを取らないと認められ始めたためでしょうか。カレー店などでも国産カレー粉の使用頻度が高まり、国産の生産量が増していきます。皮肉なこととなりましたが、この偽造事件は国内カレー粉の普及に一役買ったという結果になったということでしょうか…。

ベトナムのカレー

ベトナムカレーはサツマイモやココナッツミルクが入った、甘くてまろやかな味が特徴です。とろみはなく、スープのようにさらっとしています。辛さは控えめですが、日本と同様ライスにかけたりパンと一緒に食べるのが一般的です。

作り方は、まず肉や野菜にカレー粉をまぶし味をなじませておきます。しばらく置いたらこれを鍋かフライパンにあけ、ガーリックやレモングラス、シナモンなどのスパイスと一緒に炒め、ココナッツミルクを入れて煮込みます。日本では最後にカレールウを入れて煮込みますから、手順の違いがおもしろいですね。

またベトナムの市場では様々なカレー粉やカレーペストが売られており、自分たちでオリジナルのスパイスを調合している家庭も多くあるそうです。残念ながら日本でベトナムのカレー粉を入手するのは難しいので、自宅で作ってみたいときは、チリパウダーやターメリック、コリアンダー、シナモン、クローブなどベトナムのカレー粉に使用されているスパイスを参考にしてみるといいでしょう。

コルマ

コルマとはパキスタンやアフガニスタンで食べられているカレーのこと。ダリ語(ペルシャ語)でカレー、ウルドゥー語でリッチな、という意味を持っています。鶏肉を使ったチキンコルマが主流ですが、羊肉を使ったマトンコルマ、チーズや野菜を使ったコルマなどもあります。

コルマの特徴にはじっくり炒めてとろみを出した玉ねぎを入れること、そしてカシューナッツや生クリーム、ココナッツミルク、ヨーグルトなどの乳製品を加えること、など様々な見方があるようですが、これらに共通しているのは甘味のあるマイルドな仕上がり、ということでしょうか。辛味が少なく独特の味わいがするため、癖になってしまう人もいるそうです。

お店で食べる場合は、店員さんにお願いすれば辛さを足してもらえることもあります。また食べ方は日本やインドと同様で、ライスやナンと一緒に食べるのが一般的です。

イタリア風カレー

イタリアといえばトマトを使った料理が有名ですね。実はカレーもトマトソースやトマトスープがベースになっているんです。

イタリアには元々スープ料理の文化があり、唐辛子などの香辛料を使った辛口の料理も昔から人々に親しまれてきました。特に有名なのは、私たちもパスタなどでおなじみのアラビアータ。これは唐辛子を利かせたトマトソースのことで、トマト、ナス、ズッキーニなどの野菜、魚介類といった食材を使って様々な料理が作られています。その激辛ぶりがまるで怒っているようだということから、イタリア語で「怒り」という意味のアラビアータという名前がつけられたのだそうです。

このアラビアータとカレー粉、そのほかのスパイスやハーブをブレンドしてトマトやベーコンなどの具材を煮込んだものがイタリア風のカレーです。また魚介類をトマトベースで煮込んだスープ、ズッパ・ディ・ペッシェに唐辛子やスパイスを加えて煮込んだカレー風の料理も、イタリア人の間では広く親しまれています。

スパイスの香りの元

スパイスの多くはそれぞれ特徴的な芳香を持ち、香り付けや風味づけに利用されていますね。この香りの元は、スパイスが持っている揮発性の精油成分にあるのです。

精油は通常スパイスの中に数パーセントという少ない割合で含まれており、数種類の成分が一緒に組み合わされて香りが作られています。精油の含有量や成分の種類が多いほど、芳香も強く複雑になっていくのです。

また精油は英語でエッセンシャルオイルとも呼ばれており、こちらの呼び名はアロマテラピーとしてよく耳にすることがあるのではないでしょうか。スパイスは食用の香りづけに利用されるだけでなく、マッサージオイルとして身体に塗布したりお風呂に数滴落としてアロマバスに使用されたりもします。

料理にしてもアロマテラピーにしても、スパイスの精油には1日の疲れを吹き飛ばしてくれる力があるということですね。

ジャマイカのカレー

貿易がさかんで殖民地にされた経験もあるジャマイカには、多国籍の料理が数多く存在しています。その中にはもちろんカレーも含まれていました。

ジャマイカの人々はカレーをカレードチキンと呼んでいます。その名の通り、鶏肉を使ったカレーがジャマイカでは一般的なのです。インドから伝わった食文化がそのまま定着したらしく、見た目も味も私たちが知っているカレーそのもの。ただスパイスを自ら調合する習慣はあまりなく、あらかじめブレンドされた市販のスパイスを使用するのだといいます。

またカレーとは呼べませんが、スパイスを使ったチキン、ジャークチキンはジャマイカで最もポピュラーな料理です。屋台でよく見かけるバーベキュー料理のひとつで、ガーリック、オニオン、タイムなどのスパイスが使用されたスパイシーな味が人気となっています。

カレーとスプーン

インドでは手をそのまま使ってカレーとご飯をすくって食べますが、日本ではスプーンを使って食べるのが一般的です。普段はスプーンにこだわることはあまりないと思いますが、カレーを食べやすいスプーンの条件とうものがあるのでご紹介しましょう。

まず、スプーンの素材はステンレス製が軽くて持ちやすいという特徴があります。ステンレスは熱を通しやすいため、適度に温まったスプーンでカレーを口に入れるので違和感もありません。銀製のものは重くてやや持ちづらいですが、レストランでカレーを食べるときや高級感を演出したいときにはこちらのほうが活躍してくれるでしょう。
また最近では木製のスプーンも登場し、スプーンを口に入れたときの優しい感触や、インテリア食器として見た目にも嬉しいという特徴が人気です。

次に形です。カレーを食べるとき、つい口の周りにカレーがついてしまうことがありますよね。これを防止するために、先の部分がやや細くなったカレー専用タイプのスプーンが出ています。またお皿のふちにスプーンをひっかけておけるように、柄の先端がストッパーになっているものもあります。

このようにカレーの食べやすさを追求するならば、自然とスプーンの形状や材質にも相性のいいものが浮かび上がってくるのです。おもしろいですね。

ちなみに、刑務所ではつい最近までカレーは箸で食べられていましたが、受刑者からの要望や刑務所の運営改善の目的に合わせ、スプーンを食器として使用することが認められるようになったそうです。やはり食べやすさは欠かせない要素なのだなと、ふと感じたニュースでした。

ごはんの美味しさは何で決まる?

カレーライスをはじめ毎日の食卓に欠かせない、日本人の主食ご飯。その美味しさのもとは何なのでしょうか。

ご飯には食味官能評価というものがあり、外観・香り・味・粘り・硬さの5つで美味しさを評価します。中でも私たちがご飯を食べたとき特に美味しさの基準としているのは、弾力や甘みだと考えられています。

米のデンプンはアミロースとアミロペクチンという2種類の成分からできており、弾力はこの2つの比率によって変わってきます。両者の比はうるち米で20:80、もち米では0:100です。これを見ても分かる通り、アミロースの含有量が少なく、アミロペクチンが多い米ほど粘り気があり、もちもちした食感になります。これが弾力です。

また、甘みの根源は炊飯の最中にデンプンが酵素に分解される過程で出てくる糖です。一般的に活性酵素の働きが強いほどデンプンをよく分解するので、甘みのあるご飯になるといわれています。

ちなみに炊き立てのご飯のあのふんわりしたいい香りは、炊飯中にアミノ酸と糖が反応して生成される、カルボニル化合物と呼ばれる成分によるものです。このカルボニル反応では100~1000種類もの成分が生まれ、これらがお互いに合わさって複雑な香りを作り出しているということです。

サウジアラビアのカレー

サウジアラビアではルビエという、日本でいえばハヤシライスに似たエスニック料理があります。本来中東地域の食文化にとってスープ料理や煮込み料理はなじみの薄い存在であるため、現地ではルビエがカレーだと認識されているわけではありません。しかし見た目がカレーに似ていたり、スパイスを使用していることから、日本ではサウジアラビア風カレーと考えてもいいのでは、という見方もあるのです。

ルビエはひよこ豆やインゲン豆に黒胡椒、オリーブオイル、レモン汁、スパイスを加え、トマトをすりつぶして作ったソースでぐつぐつ煮込みます。カレーと比べると辛さよりも酸味が強く、口当たりがさっぱりしているのが特徴です。ライスのほか、ピタパン、肉や野菜をパイ生地で包んだ揚げ春巻きのようなものなどが付け合わせとなって一緒に出されます。春巻きと一緒に食べるカレーとは一体どんな感じなのでしょう。この辺りが日本にはない、サウジアラビアならではの食文化ですね。

メキシコのカレー

メキシコはハバネロやハラペーニョの原産地で、唐辛子をベースにした辛い料理がポピュラーです。タコスやブリトーなど日本でも親しみのある料理のほか、香辛料をふんだんに使った激辛料理もたくさん存在します。

しかし、実はメキシコにはカレー文化というものは根付いていません。そのため現地の人々がカレーと呼ぶような料理はないのですが、日本人から見てカレーに似た煮込み料理ならばバラエティ豊かに存在しているのです。

例えばサルサソースをベースにスパイスを加え、トマトや牛肉をことこと煮込んだものや、グリーンカレーのような料理があります。またモレソースという、なんとチョコレートを使ったソースを使った料理もあるのです。チョコレートといっても使用するのは甘味のないもので、ほかに数種類の唐辛子、トマト、たまねぎ、ナッツなどがソースの材料となります。これを鶏肉と一緒に煮込み、茶色くなった料理をライスの上にかけて完成。見た目はほとんどカレーと一緒です。

ちなみにメキシコでは、マンゴーやパパイヤなどのフルーツにもスパイスをふりかけて食べる習慣があります。スパイシーなメキシコ風カレーとデザートで、メキシコ気分を味わうのも楽しそうですね。

カレーペースト

レッドカレーペースはタイでレッドカレーを作るときに使われる、名前のとおり真っ赤な色をした、ものすごく辛い中にもコクのあるペーストです。タイ語でゲェーンペットと呼ばれていますが、これはスパイスを使った辛い煮込み料理という意味です。
使用するスパイスは唐辛子、ニンニク、レモングラス、クミン、カフェライム、ガランガルなど。カレーはもちろん、炒め物やローストチキンの下味なんかとしても優秀な働きをします。

またグリーンカレーペーストは、青唐辛子をベースとしたグリーンカレーには欠かせないペーストです。ニンニク、レモングラス、胡椒、カフェライムやクミン、ナツメグなどを砕き潰して作ります。グリーンカレーはココナッツミルクを入れてまろやかな甘味を加え、具材にはチキンが使われるのが一般的です。

自分で手作りする際は、ミキサーやクロックと呼ばれる石うすでを使ってスパイスを砕いたりすり潰したりします。またどちらのペーストも調合されたものが市販で売られているので、スパイスや器具を揃えるのが難しい場合は手軽に試してみてくださいね。

具材を炒める順番

カレーは煮込みに入る前に、具材を炒めることからスタートします。

ところで肉と野菜を炒める場合、皆さんは順番をどうしているでしょうか?まずは肉を炒め、そのまま同じフライパンや鍋を使って野菜を炒める、というのが一般的だと思います。これは肉にしっかり火を通すことと、肉から出る油や旨みが後から加えた野菜となじみ、味に深みが出るからです。
また、魚介類は火が通りやすいので、強火でさっといためて次の材料をいれるか、別のフライパンで炒めてあとから加えるなどすると食感や風味を保つことができます。
野菜を炒める順番も、火が通りにくいものから始めるのがよしとされています。

しかし、臭みの強いラムやマトン、消費期限ぎりぎりの古い肉などは野菜と別々に炒めるか、先に野菜を炒めて後から加えると臭みが気にならなくなります。香味が強いセロリやパセリなどの野菜も同様です。

順番を変えるだけで簡単にいつものカレーと一味違う仕上がりになるので、是非試してみてくださいね。

カレーのブルーミング

カレーのルウの表面が時々緑色に見えることはないでしょうか。湿気の時期やしばらく開封していなかったときなど「カビかな?」と心配したことがある方もいらっしゃるかもしれません。

実はこれ、カレーのブルーミングという現象なのです。ブルーミングとは、カレーのルーに含まれているターメリックの色素が油脂分に溶け込んで表面に浮き上がり、固まって緑色に見えることをいいます。夏の暑い時期や温度の高い室内に置いておくと油脂分が溶け、ブルーミングが起こるのですが、特に品質に問題はないので安心してください。シチューやハヤシライスのルーでもブルーミングが起こりますが、ターメリックは含まれていないため浮き上がった油脂分で表面は白っぽくなります。

ちなみにブルームは英語で「果実や葉の蝋粉(ロウ物質)」という意味で、元々はチョコレートでも砂糖の結晶が表面に残るシュガーブルーミングや、カカオバターの結晶が表面に現れるファットブルーミングの用語で使われていました。カレールーに起こる現象も同じような原理によるため、これが次第にカレーのルーにも当てはめて使用されるようになったということです。

カレーに合うお米

カレーはナン、フォカッチャ、イギリスパンと一緒に食べても美味しいですが、やはり日本人にとってカレーにご飯という組み合わせが最もポピュラーなのではないでしょうか。

以前カレーに合うライスとしてサフランライスやターメリックライスをご紹介しましたが、実は品種や銘柄によって、お米自体にカレーとの相性の良し悪しがあるのだといいます。

カレーに合うお米の条件のひとつに、カレーに絡みやすくなるため体積が小さく表面積の大きい、細長い粒がいいといわれています。またねっとりしすぎずパサパサした食感もカレーに向きです。そのような意味ではタイ米が有名ですが、パサつきが強すぎて苦手な人もいるかもしれません。

この二つの条件を満たすため、サリークイーンや華麗米といったカレー専用の米も開発されました。サリークイーンはインドの米と日本米を掛け合わせたもので、適度なパサパサ感と日本人好みの甘さが感じられます。華麗米は東南アジアのインディカ米と日本米を掛け合わせて作られており、表面は粘り気が少なく中はもちもちした弾力性があるという、まさにカレーライスのためのお米となっているのです。

カレー専用のお米で炊いたご飯にカレーをたっぷりかけたら、一体どこまで食べられるのでしょう。一度試してみたいものです。

カレーとメディア

評判のいいカレー屋に行ってみたい、美味しいカレーの作り方が知りたい、そんな時に役立つのがテレビや本、インターネットなどのメディア。
テレビではカレーの特集が組まれたり、美味しいカレー屋をめぐる旅番組が放送されたりることもよくあります。
また雑誌では口コミで美味しいと噂されるカレー屋のランキングが掲載されていたり、料理の本でカレーを取り扱っているものが数え切れないほどあります。
最近ではオリジナルのカレーレシピをインターネットで公開して、カレーを作る際の参考にする人も多くいるのではないでしょうか。

これらはどの料理に関してもいえることなのですが、カレーは特にメディアに登場する頻度、発行される書籍の数が多いように思うのです。やはりカレーは国民的に人気の高い料理である、ということを物語っているのではないか、そんな気がするのでした。

カレーの価格

近頃カレールーのメーカーが商品を続々と値上げするニュースが続いています。2007年の9月にはカレールー大手のハウス食品が値上げを表明し、翌月には同じくカレールーの主力メーカーであるヱスビー食品が、約6%から10%価格を上げるという発表を行いました。

またカレールーに限らず、パンやハムといった食品も10%近く値上がりしていますが、これは近年油脂や小麦、香辛料などの原料価格が高騰し、資材などの経費も上昇していることが原因となっています。原料価格の高騰が急であったことと、食の安全に対する感心の高まりに合わせたコスト増加などの理由もあり、今までぎりぎりのところでやりくりしていた価格設定では限界があるため、価格上昇に踏み切ったのだということです。

今後家庭でカレーを作る場合は、具にボリュームを持たせる、しっかり保存して期限を守って使い切るようにするなど、家計に影響が出ないよう、色々工夫してみる必要がありそうですね。

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