クローブ

クローブは甘く刺激的な香りが特徴で、風味づけにもってこいです。大航海時代にヨーロッパのスパイス貿易の中心として人気を博したといわれています。日本では釘のような形をしていることから丁子を呼ばれ、ビンツケ油やにおい袋に入れて使われていました。現代でもとんかつソースやウスターソースの調味料として使われていて、日本人にとてもなじみ深いスパイスなのです。またクローブは殺菌・消炎の効力に優れているため、胃薬の原料としても使われています。

原産地はインドネシアのモルッカ諸島。玉ねぎや豚肉に刺してポトフやシチュー、ローストポークの調理に使うのが一般的です。消臭力に優れているため、肉料理全般に臭い消しとして効果を発揮するのです。ほかには焼き菓子や紅茶に入れると風味や甘さが引き立ち、美味しさを引き立てます。ただし入れすぎると刺激が強くなりすぎますので少量をさっと使いましょう。

カレー料理で香辛料として利用する場合は、ホールかパウダーで調合します。
パウダーで使用するなら他のスパイスとそのまま調合しますが、ホールのまま使うなら、油で炒めて香りづけをするとよいでしょう。甘いのに刺激があり食欲をそそる風味が加わります。そのまま煮込む場合は煮とかし、形が残るようなら料理が完成してから拾い上げるように。この時お茶の葉を入れるような小袋に入れると取り出しやすいようです。

ジンジャー

日本では「生姜」と呼ばれているジンジャーほど様々な料理でなくてはならないとされているスパイスはないでしょう。ひとくちにジンジャーといっても生のもの、スライスして干したもの、おろしたもの、刻んでパウダー状にしたものなど料理によって様々な形態を使い分けて使用します。カレースパイスとして利用する際にはジンジャーを干したものを粉末状にします。調理の利便性だけではなく干したものは生のものより辛味が強いからです。

ジンジャーは高温多湿の地域に生育する植物です。中国、インド、アラビアなどでは古代から調味料として重宝されてきました。紀元前からは西洋に伝わり、日本でも「古事記」にジンジャーに関する記述があるほどの長い歴史を持っています。語源はサンスクリット語で生姜の形を鹿の枝状の角に見立てて命名されたとか。
魚や肉の生臭さを消したり肉を柔らかくするという効用があり、爽やかな風味を持っています。また飲料水やケーキ、ビスケットなどの香り付けとしても有名で、人型のジンジャービスケットや飲料のジンジャーエールなど嗜好品として親しまれています。

ジンジャーはカレースパイスの中でも爽やかな辛さで味にアクセントを与えてくれますが、酢漬けなどの薬味として付け合せられることもあります。カレーの内と外から風味を与えカレーの味に広がりを持たせているのです。

ナツメグ

四大スパイスと呼ばれるスパイスの存在をご存知ですか?胡椒・シナモン・クローブ・そしてナツメグです。ナツメグといえばハンバーグを思い浮かべる人が多いでしょう。しかし実はカレーのスパイスにも使われているのです。

ナツメグの産地はモルッカ諸島や東インド諸島で、ニクズク科の常緑樹の果実から作られます。実は杏のような黄色い形状をしていて、熟れると果実に裂け目が入り種皮が現れるのです。その仮種皮を取り除き、殻を割って出てくる黒褐色の種子がナツメグです。この際に取り除かれる仮種皮のことをメースといい、メースもスパイスの一種として使われています。
ナツメグはふわっと広がる甘みと苦味が独特のスパイスです。主に香り付けに使いますが、そのヒミツはa‐ピネンとカンフェンという木の実ならではの芳香成分。どうりであんなに香ばしい香りがするはずです。


ナツメグを使用する際は通常はパウダーにして材料に振り掛けます。挽き肉によく合うので、挽き肉カレーを作るときにオススメです。コツは調理する前にスパイスを少々振り、よくなじませること。調理したときに風味が引き立ちます。多すぎると逆に刺激が強くなるので適量を感覚で覚えましょう。オールスパイスやシナモン、チーズなどとも相性がいいようです。カレーやハンバーグ以外にもロールキャベツ、ソースのスパイスとしても優秀。

ピリッと引き立つ風味が魅力のナツメグですが、実は煮込むことによって甘みを増す性質があります。そのためトマトを使った煮込み料理やクッキーなどの菓子にも利用されているのです。
肉料理にもお菓子にも使えるオールマイティーなスパイス、他にも色々な料理に試したら意外な発見が期待出来そうですね。家庭に一本あれば家族からの評判が上がること請け合いです。

クミン

カレーのスパイスを調合するとき欠かせない主要スパイスのひとつがクミンです。これはエジプト原産のセリ科の一年草で、種子はクミンシードと呼ばれます。私たちが通常クミンと呼ぶのはクミンシードの方で、ほろ苦さと、なんともいえない独特の香りがカレーの風味をキリッと引き立たせてくれます。

クミンはそのままホールで炒めてもいいし、砕いて粉末状にして使う方法もあります。
ホールのまま使う場合は熱した油でクミンをさっと炒めます。しばらくチリチリと炒めたら、焦げないうちに取り出します。こうすることで油に香りが移り、次に材料を炒めたときも香りをつけてくれるのです。
粉末状にして使うときは空炒りしたクミンをすりつぶし、そのままカレーに入れるか他のスパイスと混ぜてオリジナルのスパイスを調合します。ターメリック・コリアンダー・シナモン・ナツメグ・グローブなど、数種類から十数種類のスパイスを好みの配分で混ぜ合わせます。スパイスは色づけ・香り付け・味付けなどそれぞれ効能があるします。

どのくらいの割合で配合するかは野菜か肉かといったカレーの種類やその日の気分によって変えられます。ただこれがなかなか難しい!理想の味を一度で表現するには、経験とカンがものをいいます。スパイスの世界は奥が深いのです。

カレー粉はイギリス生まれ?

カレーの本場はインドなのに?と思われることでしょう。確かに起源はインドになるのですが、カレー粉という概念を作ったのはイギリス人なのです。当時イギリスの植民地であったインドからイギリスにカレー料理が徐々に伝わっていったのですが、インドではその料理ごとにスパイスを複雑に取り混ぜて使っていました。スパイスを使い慣れていないイギリス人はその調合の難しさに困り、最初から調合されたスパイスを作ることになったのです。これがカレー粉。

インドでは日本人が思うよりもっと広い意味でカレーという料理があります。まったく辛くないカレーもあるとか。イギリス発のカレーの味にすっかり慣れてしまった私たちにはちょっと意外に感じるかもしれませんね。