カレーとアーユルヴェーダ

最近TVや雑誌で、アーユルヴェーダということばを耳にしませんか?
アーユルヴェーダとは、サンスクリット語で生命・生気という意味のアーユスと、知識という意味のヴェーダを合わせて作ったことば。インドで古くから受け継がれてきた思想で、約五千年もの歴史があります。アーユルヴェーダは人々が健康で賢い生活を送れるよう、医学や生活の知恵、生命科学、哲学の概念を含んだ学問として発展してきたのです。

実はカレーのスパイスにもアーユルヴェーダの概念が含まれています。その概念とは、人間は運動・変化・安定性の3種類の生命エネルギーによってからだの生理的機能が統率されるというもの。この3つのエネルギーのバランスが取れている時こそ健康な状態だというのです。

そしてそのバランスを保つには食生活がとても重要だと考えられています。
スパイスは体を健康にする効き目のあるハーブや薬草をそのまま使ったり、種子を乾燥させて砕いたりしてパウダー状にしたもの。香り付けや色づけといった料理を美味しくする効果だけでなく、消化促進・疲労回復など体の調子を調整する働きもあります。スパイスは体のバランスを整えるという、アーユルヴェーダの食文化の基礎を支える存在だといえるのです。

それにしても、インドでカレーは思想や文化と密接に関わっているのですね。まだまだ探求の余地がありそうで、カレー好きとしてはとても楽しみです。

カレーは日本人の定番食

皆さんおわかりのように、日本人はカレー好きの国民です。
街に出れば、インドや東南アジアなどの本格的なカレーが味わえますし、カレーうどんやカレーパンといった、カレーを利用した食べ物も定番の人気食ですよね。

そこで沸いてくる疑問が、「日本人は一体どのくらいの頻度でカレーを食べているんだろう?」ということです。
農林水産省の純カレー・即席カレーの統計と、日本缶詰協会のレトルトカレー・缶詰カレーのデータを使って調査した結果、日本人は1年に約62回カレーを食べているそうです! 家庭での手作りカレー、外食するカレー、レトルトカレーなどの全てを含んだ数字ですが、ゆうに週に1度はカレーを食べていることになるのだから驚きです。

ある調査によると、家庭でカレーを作って食べる頻度は、月に2.5回程というデータも出ています。カレーは基本の料理方法が簡単ですので、お年寄りや子どもでも気軽に作ることができます。また、反対に味を追求したい人にとってはスパイスの種類や材料、調味料などいくらでも工夫できるため、自分なりのアレンジが楽しめる、魅力的な料理だといえるでしょう。こんなこともカレーを食べる頻度を上げる要因になっているのかもしれませんね。

手で食べるカレー ~国が違えば食べ方も違う~

インドではカレーを手で食べるのが一般的です。
正式なマナーというものは特に存在しませんが、手で食べる時に注意することや、正しいとされる食べ方があるのだそうです。

一番重要なのが、「右手」を使うこと。これは絶対のルールです!
インドでは、「左手」は不浄の手とされています。そのため食事や握手の時は、「右手」を使用することになっているのです。

どのように手を使って食べるのかというと、まずは食事の前は手を洗います。これは日本でも同じですね。日本では石鹸を泡立てて両手を洗いますが、インドでは右手だけ水で洗うのが正式な方法のようです。
そしてスプーンの代わりに手を使ってごはんにカレーをかけ、よく混ぜます。ここから手でカレーとご飯をすくって食べるのですが、方法が2種類あります。
指を使ってご飯を一口大にまとめて口に運ぶ方法と、日本でいうなら寿司を握るように、手のひらでご飯をまるめて口に運ぶ方法です。
どちらが正しいというわけはないので、食べやすい方法でいただきましょう。

ちなみにインドのカレーはサラサラしていますが、日本のカレーはトロッとしています。これは食べ方が異なるからだという説があります。インドはさらっとしたカレーのほうが手でかき混ぜやすいですし、反対に日本はスプーンを使って食べるので、液体よりも多少とろみのついた状態のほうがすくいやすいのでしょう。
文化の違いによる、カレーの違い。カレーっておもしろいですね。

カレーリーフ ~カレーの木?~

「カレーの木がある」。
そう聞いたら皆さんはどんな木を想像するでしょうか?
カレーは料理名であって、野菜や果物ではありませんから、そもそもイメージがわきづらいかと思います。しかし、確かにカレーの名のつく植物が存在するのです。

カレーの木には2種類あります。ひとつはカレーリーフという名前で呼ばれています。
葉っぱからスパイシーな香りがするため、インドやスリランカでは、カレーや魚・ココナッツを使った料理の香辛料として使用されています。西南アジア原産のミカン科に属する植物で、南インドやスリランカ、ヒマラヤ山麓などでは特に珍しくもなく、普通に自生しているそう。家庭で栽培することも多いといいます。

もうひとつはカレープラントと呼ばれる木で、南インドを中心に観賞用やハーブとして使われています。夏が終わると、カレー粉のような鮮やかな黄色の花をつける、キク科の多年生植物です。
主にハーブとして葉の部分が使われますが、香り立ちがいいので料理に用いる場合はごく少量でOK。また花は乾燥させてスープやピクルスの香り付けに使います。
色が奇麗に残るため、ドライフラワーやポプリの材料にも使われるそうです。

カレー好きの知り合いにプレゼントすると、意外性もあって喜んでもらえるかもしれませんね!

カレーとらっきょうと豚肉

カレーに合う付け合わせのひとつとして挙げられるのが、「らっきょう」です。「らっきょう」は塩漬けや甘酢漬けの状態で店頭に売られており、カリッとした食感と鼻にツンとくるすっぱさ、そして独特の香りがカレーへの食欲をそそられます。

らっきょうは中国原産のユリ科の多年草。元々は薬用植物として平安時代に日本に伝わりました。今では漬物としてカレーやご飯のお供として食卓に並びますが、江戸時代からは野菜として栽培されていたそうです。
「畑の薬」と称されるほど、さまざまな効能を持つらっきょうですが、特に注目したいのはアリシン(硫化アリル)と呼ばれる成分。アリシンはビタミンB1の吸収をよくする働きを持っているため、ビタミンB1を含む食材と一緒に食べると、効果的に栄養を摂取できます。そして、カレーの肉でよく使われる豚肉には、ビタミンB1がたっぷり! ビタミンB1は疲労回復や夏バテに効くため、夏の暑い時期に好んで食べられるカレーにはやはり相性がいいといえますね。

らっきょうはこれからの初夏~夏場が旬。自分で酢漬けにするなら、ツヤっぽくかたさがあり、芽が青くないものを選びましょう。買ったらその日のうちに手早く水洗いし、酢漬けにしてしまうのが長くおいしく保存できるポイントです。